持続可能な社会と健全な社会資本のためのセメント系材料の材料設計

摘要

昨今の建設業界には，資源循環型社会への貢献が強く求められている。 セメントの生産量は年間約7千万t（普通ポルトランドセメントは約4千7百万t）に上り，その中間製品であるセメントクリンカーを製造する際に，原料や燃料として大量の産業廃棄物·副産物が使用されている。 このような資源循環のシステムが社会に評価されつつあるが，近年では原料としての廃棄物の利用が飽和状況にある。 セメントの内需の増加も見込めないため，今後いかに廃棄物使用量を増大するかが大きな課題となっている。 一方，世界的に温暖化防止の機運が高まる中，セメント産業はCO_2排出量の多い主要業種として位置づけられており，低減に向けた取り組みが急務である。国内のセメント産業は世界でもトップレベルのエネルギー効率を誇るが，低炭素化社会の実現に向け，さらなる技術展開を図ることが望まれる。この対策としてのセメント系材料の材料設計は，今後一層重要になると考えられる。また，セメント産業の本来の使命は，健全な社会資本を構築する材料を提供することにある。 新たなセメント系材料を実現するためには，構造物の耐久性に係る品質の制御技術を確立する必要がある。