アルミニウム合金鋳物におけるピンホールの欠陥レベルが溶接特性に与える影響

摘要

ダイカストを含むアルミニウム合金鋳物の総需要の約9割が2輪，自動車向けである．したがって，その鋳造技術や関連技術も2輪，白動車と共に進歩を遂げてきた．この中で，アルミニウム合金鋳物を溶接によって構造体を造ろうという動きは，1980年代半ばに，2輪車用フレームで実現され，鋳物と展伸材との溶接に必要な品質管理や溶接に適したアルミニウム合金鋳物の開発なども盛んに行われた．更に1989年，ホンダ「NSX」によって世界で初めて自動車のフレームがオールアルミニウム展伸材の溶接構造で生産され，1990年代初頭には，AUDI「A8」で結節部分に高真空ダイカスト部品が溶接され，続く「A2」?「A8」で，鋳造部品が増加しかつ大型化していった．国内における鋳造品と展伸材の代表的な例を図1に示す．ここでは，スクイズダイカスト又は高真空ダイカスト品とアルミニウム板材や形材が溶接され，軽量かつ高剛性な構造体が実現されている．自動車におけるこれらの需要は，今後の環境問題を背景に燃費規制にからむ軽量化動向が鍵となる．一方量的には少ないが，ロボットのアームや医療機器向け砂型大物鋳造品やロストワックスなどの精密鋳造品においては，高付加価値のため溶接補修による鋳造欠陥の救済などの需要が潜在的にあった．