自動車部品の複合表面改質による疲労強度向上：特集にあたって

摘要

自動車では，高性能化，省エネルギーと環境への配慮から，構成要素の疲労限度の向上が強く求められている．もちろん，これに答えるための疲労限度向上技術は経済的なものでなければならない．金属材料の疲労限度に及ぼす影響因子に関しては，様々な教科書で懇切丁寧な解説がなされている．例えば，(1)表面粗さは小さい方がよい，(2) 硬さと疲労限度との間には，最適値があり，あまり硬くすると疲労限度は逆に低下する，(3)圧縮残留応力の導入は疲労限度向上に有効であるが，その残留応力は疲労過程で低下することがある等である．また，金属材料の疲労破壊に関しては，これまでに膨大な研究が実施されており，その破壊過程は相当に解明されている．しかしながら，疲労限度を経済的に向上させるにはどうすればよいか？ との質問に対して明快に答えることは，極めて困難である．