金属系バイオマテリアルの研究開発·最前線：生体用形状記憶·超弾性合金

摘要

TiNiの生体適合性や細胞増殖性や耐食性はTiやCo-Cr合金と同程度である．この理由は，Ti合金と同様に表面に不動態皮膜となるTi酸化物を形成するためである．とはいえ，Niは典型的な生体アレルギー元素であり，ステンレスなどのNi含有合金は生体材料としては倦厭される．また，TiとNiは共に原子番号が低くレントゲン撮影で写り難いという問題もある．これまでにTiNiによる明瞭なNiアレルギーの例は無いが，TiNiの医用応用が年々増加している現状から，TiNiによるNiアレルギーの発症も時間の問題であろう．以上の背景から，さらに安全で高機能の生体用形状記憶合金が必要である．生体用としては特に超弾性合金が重要であり，形状記憶よりも超弾性の方が発現が難しいため，我々は生体有害元素を含まない優れた生体用超弾性合金の開発に取り組んでいる．本稿ではその現状について述べる．