歯科用接着削の現状と未来

摘要

歯科用接着剤は接着性モノマーと被着体の表面処理を巧みに組み合わせることで，急速に展開し，接着技法が改善されてきたが，このような展開はほぼ限界に達しているように思われる。 今後，飛躍的に接着技術が進化するには，レジン重合の根本的な課題である重合収縮が解決されなければならない。 モノマーが重合してポリマーになる際に体積が膨張するようなモノマー系が開発できれば，これまでの接着理論も見直されて究極の歯科用接着剤の登場へと展開するであろう。 重合膨張性モノマーの研究はまだ手探りの状況であるが，これからの基礎的研究の展開を見守りたい。 今後の社会情勢を鑑みると，環境問題が益々重要視されると考えられ,最高の接着機能を有するが安全性に不安が残る材料よりも，機能は劣るが安全性が確認されている材料の方が優先されるようになるであろう。 この接着機能と安全性を両立させるには，新奇接着剤の設計·開発だけでなく，既存の素材の複合化による機能の創造にも重点を置かなければならない。 安全性に関連して，初期接着強さが大きく，徐々に劣イヒが起こる材料よりも，初期接着強さは小さいが，劣化の起こらないシステムの設計·開発も大きな流れの一つとなるであろう。