レーザ誘起ブレークダウン発光分光分析法による鉄鋼の欠陥原因解析法の検討

摘要

LIBSにより亜鉛めっき鋼板の各種表面欠陥，及び鋳片の中心偏析の分析を行い，本技術が鉄鋼の迅速評価に有効であることを確認した。 鋼板の表面欠陥の分析を行い，正常部に比べて欠陥部では欠陥に特有な元素の発光強度が高くなることを確認した。 すなわち，①パウダー系欠陥部ではAl，Ca，Mg，Si，Na，②アルミナ系欠陥部ではAl，③スラグ系欠陥部ではAl，Ca，Mgの発光強度が増大した。 一方，④スケール系欠陥ではいずれの元素も発光強度の増大は認められなかった。 この欠陥部位で検出された元素は，EPMA等で分析された欠陥の原因である介在物の特徴とよく一致した。本評価技術によれば，機械的·化学的な前処理を行うことなく，レーザ照射のみで欠陥部分に特徴的な元素を同定することができ，欠陥の原因を迅速，簡便に推定することが可能である。 鋳片の中心偏析部の分析では，中心偏析の元素マッピングが可能であることを確認した。 偏析の大きさや，濃化元素から中心偏析の生成原因や物性を迅速に把握することができるため，中心偏析軽減に向けた鋳込み条件や設備の見直しの基礎データとしての活用が期待される。 本研究を進めるにあたり，元·新日本製鐵（株）先端技術研究所解析科学研究部主幹研究員の佐藤真樹博士（現：東邦チタニウム（株））には様々なご助言を頂きました。 ここに記して謝意を表します。