化学分野におけるナノテクノロジー：化学ICが拓くバイオマイクロデバイス－分析系から合成系,生体系への挑戦

摘要

2000年のグッドデザインはミレニアムを記念して「新領域部門」が新設された。 これまでグッドデザイン賞は製品を選考対象として与えられてきたが，新部門では製品前のコンセプトや萌芽的な革新技術を対象としている。 いわば未来の画期的製品の芽を発見し，商品化を促進することをねらった賞なのである。 その中で「人工細胞デバイス·化学IC」という聞き慣れない作品が受賞した。 これは名古屋大学工学研究科でバイオマイクロマシンを研究している筆者がコンセプトを提案し，自らの研究室で開発を進めている新技術である。 化学IC（化学集積回路）という言葉は筆者の造語で，英語でBiochemical ICやChemical ICと訳されている。 工学だけでなくデザインの世界でも注目を集めるこの化学ICとは，どんなものなのか。 将来製品化された時，われわれにどんな貢献をしてくれるのか。 本報ではこの革新技術について紹介する。