超電導の夢-高温超電導以後の世界

摘要

1986年に高温超電導が発見されて以来20年を経過し、さまざまな困難を克服して、その実用化が始まろうとしている。 そして、当初考えられていた夢の多くは近く実現するものと思われる。 当時、多くの人々は磁気浮上列車が高温超電導体で浮上、走行する姿を夢に描いたが、実際に高温超電導マグネットを装備した磁気浮上列車が時速550kmで試運転に成功したのは2005年10月のことであった（本特集中のJR東海の記事を参照）。 一方で、その間に世界情勢は激変した。1991年の冷戦終結と同時に世界は一気に流動化した。特にこれまで後進地域とみなされていたBRIC's諸国の20億を超える人々が、より良い生活を求めて一斉に世界経済に参入しつつあり、エネルギー、資源、環境等、多くの分野で世界経済に大きな衝撃を与えている。そして、この世界的難局を乗り越えるためには、19世紀初頭の産業革命に匹敵するほどの新しい産業技術を開発する必要がある。