社会ニーズ踏まえゲノム解読成果生かした実用化研究を推進

摘要

2005年度の国家ライフサイエンス関連予算は，科学技術予算全般にわたる優先順位制による格付けの実施で，重要性の高い分野としての認識が得られ，増額を確保できたといえる。 健康，解読成果の活用によるポストゲノム研究の推進，テーラーメイド医療，ゲノム創薬，画期的な診断技術などをキーワードとして5年程度先を見越して実用化とその普及が可能となりそうな中期的研究テーマが目立つ。 また，新興感染症や食品への信頼回復など目下，国民の大きな関心事である安全，安心対策にもライフサイエンス研究が大きな役割をしめさなくてはならないとする政府の考えが2005年度予算には明確に打ち出されているといえる。 ただ生命システムの謎を追求し，複雑化するライフサイエンス研究には，米国が取り組みを開始している異分野の学問を結びつけながら統合科学としての認識が不可欠となってきていることを考えると，いまだに残る省庁間の壁を取り除き，産業創出を誘導する刺激的な施策との組み合わせが必要である。 国家の強みを生かした戦略的，効率的な研究プロジェクトの設定を進める柔軟な姿勢と予算配分が2005年度にもみられないのは残念だ。