シリカガラスの真空紫外域の透明性と真空紫外レーザーとの相互作用

摘要

組成が単純で光学材料としての特性も優れたシリカガラスは，これまで最も研究され，膨大な知見が蓄積されたガラス材料である。 しかし，シリカガラスの紫外透明性と紫外レーザーとの相互作用に関する分野は，高品質シリカガラスの登場とエキシマレーザーリソグラフィーへの応用を契機として近年本格的に研究され始めた，いわば空白の領域であった。 現在リソグラフィーの分野では，フォトマスクと違い基本的に交換されないため格段にスペックの厳しいレンズ用ガラスをも実現すべく，光劣化機構の解明とそれらの知見の製造過程へのフィードバックが切望されている。 深紫外光ファイバーは，紫外域で透明かつ加工の容易なシリカガラスにとって絶好の応用であるが，未知の点が多い紡糸過程の理解が進めば更なる特性の向上が期待できるであろう。 一方で，本稿で述べたSiOH基の光誘起構造変化や水素拡散挙動の解明などは，研究の過程で見出された予期せぬ展開であった。 紫外基幹材料としてのシリカガラスの進歩につながる新たな知見や現象を，今後も探っていきたい。