秋田県北鹿黒鉱鉱床地域のバイモーダル火山活動の地球化学的特徴

摘要

北鹿地域は多くの大規模黒鉱鉱床を含み，世界的にも有名な火山性塊状硫化物鉱床区の一つであり，黒鉱鉱床に関する地質学的，地球化学的研究が数多くなされている．黒鉱鉱床胚胎層準·下盤層準である大葛層と上盤層準である大滝層とは共にバイモーダルな火山岩類と泥岩が分布している．本研究の目的は，（1）何故大葛層最上部にだけ黒鉱鉱床が形成されているのか，その二つの層準の地球化学的特徴，（2）鉱床層準と玄武岩部層との層序的な関係（3）玄武岩類の化学組成（特に微量元素組成）から黒鉱鉱床の形成前後の島弧-背弧環境，を検討し明らかにすることである．黒鉱鉱床下盤および胚胎層準の大葛層は男鹿半島の西黒沢層と対比され，下部に保滝沢玄武岩と呼ばれる枕状溶岩，凝灰角礫岩が存在する．上部は，酸性凝灰岩やデイサイト質溶岩が卓越する．デイサイトは溶岩ドームを形成しており，この火山活動に伴い，黒鉱鉱床は形成された．黒鉱鉱床上盤の大滝層は，男鹿地域では女川階に対比され，主に酸性凝灰岩からなり，一部で玄武岩質溶岩やデイサイト質溶岩，泥岩が見られる．大滝層の酸性凝灰岩は租粒 ⒓毩Ｄ已遥X石凝灰岩，凝灰角礫岩からなり，デイサイト溶岩片，泥岩片を取り込んでいることが多い．