I.膵癌 6.科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライ

摘要

要旨 膵癌診療ガイドラインは2006年4月の初版刊行から3年を経た2009年7月に改訂版が膵癌診療ガイドライン2009として，前回同様，日本膵臓学会より刊行された.診断のアルゴリズムは矢印が上から下へと流れるように変えられたが，内容に変化はなかった.治療法のアルゴリズムでは，切除不能と化学療法を結ぶ線が初版ではェビデンスレベルがCであったため，点線であったのが，2009年版ではェビデンスレベルがBになったので，実線となった.診断法では危険因子として新たに合併疾患として肥満と膵管内乳頭粘液性腫瘍（IPMN)が取り上げられた.また，膵癌の細胞診や組織診断の重要性が強調された.化学療法では局所進行切除不能膵癌に対する化学療法単独の推奨度がじょりBへ上がった.放射線療法では"化学放射線療法の標準的な併用化学療法は何か？","外部放射線治療の臨床標準的体積に予防的リンパ節領域を含めるべきか？"が今回.新たに取り上げられた.しかし,その推奨度はグレードC1となっている.外科的治療法では"非切除バイパス，胆管ステント療法は意義があるか？"は今回，始めて追加され，"外科切除を目的に開腹し，非切除となった黄疸を伴う膵癌に対しての胆管空腸吻合による減黄術，予防的胃空腸吻合術が推奨される"で推奨度はグレードBとなっている.補助療法では術後補助化学療法については初版では5-FUをベースとする補助化学療法はグレードBが，一方，ゲムシタビン塩酸塩にっレ、てはグレードCに留まつていた.しかし，2009年版ではゲムシタビン塩酸塩の有用性を示すCONCO-001試験が発表されたため， "ゲムシタビン塩酸塩による術後補助化学療法は，有用性，安全性の点で比較的良好な成績を示しており推奨される"として推奨度はグレードBとして推奨されている.膵癌診療ガイドライン2009を初版より2009 年版への変更点などを中心に概説した.