4.頸椎症の臨床

摘要

日常の診療で，慢性的な肩凝り，手の感覚障 害もしくは脱力などを主訴に来院する患者は少 なくない.頸椎症は成年期以降に発症する代表 的な運動器疾患の一つである.加齢に伴い頸椎 は変形し，椎間板は狭小化し，前後に骨刺をな し，椎間孔は狭小化する.椎体のみの退行変性 が椎体に限局していることは稀であり，椎体前 後の靭帯，特に後縦靱帯や黄色靭帯と肥厚骨化， 椎間板の退行変性を伴っていることが多い.こ のように，椎体とそれを取り巻く軟部組織の加 齢性変化に伴い，神経根や脊髄が圧迫されて， 様々な神経症状を来すことになる（図1).狭義 の変形性頸椎症とは椎体の退行性変化を示すが， 本稿では椎体を取り卷く軟部組織の多退行性変 化も含めた，より広い概念として，以下にその 症候と診断の要点を述べる.