スタテンは急性心筋梗塞患者の左室駆出率を改善する

摘要

早期再港流療法を行った急性心筋梗塞（AMI）患者において，スタテン投与による左室駆出率への効果を検討した。 AMIを発症後24時間以内に経皮的冠動脈形成術に成功し，平均6カ月後の冠動脈造影検査で3枝ともに有意狭窄を認めず，かつ急性期と慢性期の両方で左室造影検査と血清脂質値検査を施行し得た20例を対象に，スタテンの左室駆出率に対する効果を後ろ向きに検討した。 スタテン治療群は10例（男性9例，女性1例），スタテン非治療群は10例（男性9例，女性1例）で，両群の性別，年齢，Body Mass Indexならびに喫煙，高血圧，糖尿病を有する患者数，ピークCPK値，責任冠動脈，併用薬剤に有意な差を認めなかった。 血清脂質は，スタテン治療群で血清稔コレステロール値，低比重リボ蛋白コレステロール（LDL－C）倍が追跡終了時に有意に低下した（各々p＜0．05）。 スタテン非治療群では追跡終了時にトリグリセリド値以外で有意な変化を認めなかった。 左室駆出率は,スタチン治療群で54±6％から61±8％へ有意に増加したが（p＜0．05），スタチン非治療群では61±11％から57±11％と不変にとどまった。AMI発症後早期からスタテンを投与することは，LDL－C値を低下させるのみならず左室駆出率を改善することから，患者の予後改善に寄与する可能性が示唆された。