造血幹細胞分化と転写因子－NF－E2関連タンパクを中心として－

摘要

造血幹細胞が，赤血球に分化する過程では，グロビン遺伝子などの赤血球特異的な遺伝子が時間的に空間的に制御された形で発現する。 グロビン遺伝子を含めた赤血球特異的遺伝子には共通したシス配列が転写調節領域に存在している。 特にGATA配列は，赤血球特異的遺伝子の制御領域に例外なく存在することから，1989年に赤血球特異的転写因子として最初にGATA配列に結合する因子GATA－1が単離された当時は，赤血球分化のマスタースイッチが見つかったという期待が持たれた。