局所脳虚血に対する脳低温療法とトランスレーショナル·リサーチ

摘要

1987年，動物モデルにおいて脳虚血に対する脳低温療法の有効性がはじめて確認され，その臨床応用への道が開かれた．その後，脳低温療法は成人の心肺停止後脳症，新生児の低酸素性虚血性脳症といった全脳虚血や重症頭部外傷に対して，その有効性が検討されてきた．しかし，局所脳虚血（脳梗塞）に対しては少数例を対象とした予備的研究に限られており，わが国の脳卒中治療ガイドライン2004においても脳低温療法の位置づけはグレードCl（考慮してもよいが，十分な科学的根拠がない）とされている．本小論では，局所脳虚血に対する脳低温療法のトランスレーショナル·リサーチの現状について概説する．