今日に至る医療技術の進歩は,過去には致死的であった疾患の救命率を飛躍的に改善させてきた(インスリンの発見抗生剤の発吼人工透析の開発,急性心筋梗塞に対する冠動脈形成術など).しかしその一方で,既存治療が根本治療でない疾患では,重症例が累積する結果となった.すなわち,罹病率の上昇と機能喪失にょるQOL(quality of life:生活の質)の低下という高齢社会特有の問題点に直面している.失われた機能を回復しQOLを改善させる根本治療として20世紀には,移植医療が進歩を遂げ,一般的な治療として十分に浸透し多くの患者を救ってきたが,ドナーの恒常的不足などの問題のために現時点で限界がみえてきている.そこで,細胞から組織や臓器をつくる再生医療があらたな治療戦略として期待されている事実際,細胞移植や遺伝子導入を用いた再生医療が臨床でも応用されはじめている.本稿では再生医療の応用例を紹介しながら,高齢者への再生医療の展望について概説する.
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