慢性腎不全患者に発生した男性乳癌の1例

摘要

慢性腎不全患者における悪性腫瘍の発生頻度は健常者のそれに比べて高いとされているが，その中で男性患者の乳癌の報告は非常に稀である．一方，男性乳癌そのものは全乳癌の1％程度の発生頻度と言われており，その報告も少なくない．今回，筆者らは慢性腎不全の男性患者に発生した乳癌を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する．患者：59歳，男性.主訴：左乳房腫瘤.家族歴：特記すべきことなし．既往歴：39歳糖尿病．53歳糖尿病性網膜症で手術．現病歴：1995年4月から糖尿病性腎症による慢性腎不全に対して，不定期に体外限外濾過法施行中であった．1999年初め頃から左乳房腫瘤を自覚していたが放置していた．同腫瘤が次第に大きくなり，痛みも伴うようになったため，10月18日外科外来を受診，10月22日入院となった．