シンポジウム4「ARTに関連した最新技術」5）老齢繁殖障害ウシ由来卵子の卵核胞移植（GVT）による発生能の改善

摘要

老齢の雌動物では，一般に生殖寿命が終わりに近づくと，主として卵巣内の卵母細胞の枯渇に起因して，発情周期が不規則となり，排卵や受精率の低下，胚死や死産率の上昇がみられるようになる．その生理的背景，原因は多岐で複雑であるが，卵子そのものの「老化」，特に細胞質の紡錘体系の異常は，受精率の低　 下や胚死の1つの要因と考えられる．実験小中動物では個体寿命と生殖寿命の差はヒトのように大きくはなく，閉経という概念はない．しかし，ウシでは老齢によって受胎しがたい個体が散見される．また，ウシは体外受精技術や模移植技術などの繁殖補助技術が早くから研究，応用されており，基礎的な知見や技術の集積が豊富であることから，卵子の老化機構を解明するためのヒトの高齢不妊モデルとして適している．