男性不妊症患者におけるムンブス精巣炎の検討

摘要

ムンブス精巣炎患者について,その造精機能に与える影響を中心に臨床的に検討した. 1987年から1999年までの間に,男性不妊症を主訴に当科を受診し,ムンブス精巣炎の既往のあった16例(16-43歳,平均30.4歳)を対象とした.精巣炎発症年齢は14-29歳で平均21.3歳であった.併発症として聴力障害を1例に認めた.恩側は,両側7例,片側7例,不明2例であった.両側罹患例では5例が無精子症, 1例が乏精子症を呈し, 1例のみが精子数,運動率ともに正常であった.片側例では1例に乏精子症を認め, 5例は精子数正常であったがそのうち3例に連動率の低下を認めた.両側例のうち,罹患後2カ月で無精子症を呈した1例は, 18カ月で精子数,運動率ともに正常化した.精巣生検を2例に施行したが,両側罹患例で16年を経過した無精子症例においてもJohnsen score4.6と生殖細胞が認められ,このような症例ではTESE-ICSI等の補助生殖技術の応用により挙児を得られる可能性が示唆された.