小児生体肝移植後にCMV感染と考えられる 腸炎を合併した1例

摘要

肝移植後のcytomegalovirus (CMV)感染症は致死 的になることもあるため,その予防，診断，治療は 重要であるが,それらの治療方針についは，いまだ統一した見解がない。肝移植後CMV感染症のハイリス クグループとして，CMV既感染ドナー(D + ) /CMV 未感染レシピエント(R-)の肝移植(D+/R- ）， ABO 血液型不適合肝移植，術前ICU管理，原疾患が劇症 肝炎，muromonab-CD 3治療後などが挙げられ，特 に注意を要する。CMV感染症の抗ウィルス薬の使用方法には，prophylaxis とpreemptive tnerapyの2つがめる.prophy-laxisは予防的に抗CMV薬を投与する方法であり，よ り強力に術後早期のCMV感染症を減少させることが できるとされているが，一方で，prophylaxis終了後 のlate onset CMV感染症の出現,耐性CMVの出 現，骨髄抑制などの有害事象などの問題点もある。 したがって，本邦ではpreemptive therapyが一般的で あるが，その方法は施設間で異なるのが現状である。 現在，当施設においてもpreemptive therapyを用いて おり，術後定期的にCMV抗原(pp 65 antigenemia method)を測定し，陽性例に対して抗CMV薬を投与 することで対応していた。