心臓移植後の免疫抑制治療

摘要

2010年7月17日の改正臓器移植法施行により，成人心臓移植件数は著增し,小児に対しても道は開かれた。今後のわが国においては，心臓移植待機者の管理，とりわけ補助人工心臓(VAS)装着患者が増加することによる感染や血栓塞栓症へ対応はこれまで以上に重要な課題となるであろうし，また心臓移植を受けた患者の慢性期までも含めた管理はさらに注目されてくるに違いない。ここで，心臓移植後の管理を大きく分けると，急性拒絶反応や感染症等の急性期管理と，移植心冠動脈病変(cardiac allograft vasculopathy ： CAV)，悪性腫瘍，腎機能障害，等に代表される慢性期管理に分けられる。移植時から開始される標準的三薬併用療法(standard triple therapy)は，非特異的免疫抑制療法であるが， その使用方法はほぼ確立されているといっても過言ではなく，したがって今後の課題は，慢性期の問題をも包括した管理をどのように工夫していくかであろう。そこに登場する薬剤に，proliferation signal inhibitorであるmTOR阻害薬のeverolimusがあり，everolimusの慢性期管理への効果が期待される。