温度補償回路内蔵X帯MMIC電力増幅器

摘要

電力増幅器には低消費電力，広帯域な特性が求められるとともに，環境温度の変化に対して利得が安定であることが求められている。 GaAs FET(Field Effect Transistor) 電力増幅器の利得は，温度によって大きく変化し，温度の上昇に対して利得が低下する特性を持ち，多段増幅器では通常数dBの利得変化がある。その結果，温度によって増幅器の出力電力が大きく変化する。そこで，増幅器の利得変化を小さくするために温度センサを用いたアツテネータの制御やドレイン電流の制御が行われているが，増幅器モジュールが大型化する問題点があった。 増幅器モジュールの小型化には，増幅器自体が温度補償機能を持つことが望まれる。 そこで，温度補償回路をMMIC(Microwave Monolithic IC)増幅器内部に一体形成することで，温度に対する利得を一走に保つ機能を持つX帯MMIC電力増幅器を設計し試作した。 この温度補償回路は，ダイオードと抵抗で構成されており，ダイオードのスレッショルド電圧が温度の上昇に対して低下する特性を利用している。 この温度補償回路をX帯4段電力増幅器に適用した。 測定の結果，この温度補償回路を用いることで，－10～+80℃における利得変化量を5.5dBから1.3dBに抑圧でき，温度補償回路が有効に動作していることを確認した。