ヒューマンセンシング技術の開発と作業計測への応用

摘要

機器·システムを操作している際の人間の状態を正しく把握することは，ヒューマンインタフェースの良い設計を行うためには極めて重要である。 ヒューマンセンシング技術とは，人間の状態を定量的に表すための手法を総称したもので，行動量（動作，発話，視線，表情など），生理量（心電図，心拍，脈波，血中成分など），心理量（快·不快など）の計測·解析技術から構成される。 本稿では，上記のうち，行動量と生理量の計測·解析技術を工作機械を使用する作業行動場面における人間の状態把握に適用した事例について述べる。 行動量に関する事例としては，作業者の動作及び注視点計測を行うための三次元位置計測システムの概要について述べる。 このシステムは，無線式赤外線LED発光マーカを討測対象者の身体部位に装着し発光させ複数カメラのステレオ視によって三次元位置計測を行うもので，高精度かつ非拘束なリアルタイム計測を実現した。 生理量に関する事例としては，工作機械を使用する際の作業者の生理データ計測とそれを基にした自律神経系指標について説明し，自律神経系指標の振る舞いから熟練者の作業行動解析が可能となることを述べる。なお，この研究は，産業経済省産業技術基盤研究開発プロジェクト「人間行動適合型生活環境創出システム技術」において実施した。