無線LANを用いた映像ストリーム伝送技術

摘要

無線LAN (Local Area Network)の伝送帯域の拡大に伴い，無線を利用してハイビジョンの映像ストリームをこま落ちなく伝送する映像ストリーム伝送技術の開発を進めている。 IEEE802.11aに代表されるデータ伝送系ネットワークでは，以下に示す2つの要因により，データパケットの到着時刻の乱れ（以下“伝送遅延ジッタ”という。 ）が発生する。 (1)ネットワークの伝送帯域差に起因して発生するジッタ；(2)無線送信機－受信機間のクロック周波数偏差に起因して発生するジッタ。 本稿では，MPEG-TS (Motion Picture Expert Group-Transport Stream)の伝送を対象として上記要因で発生するジッタを抑制しハイビジョン映像ストリームを無線で途切れなく伝送する映像ストリーム伝送技術について述べる。 伝送帯域の異なる非同期系のネットワークを介してMPEG-TSの伝送を行う場合は，①受信機から適切なタイミングで受信TSパケットを出力する機能，②送信機－受信機間の基準クロックの同期機能を実装する必要がある。 ①については，TSパケットの先頭にタイムスタンプを付加し，受信機側でタイムスタンプ情報を基に受信したTSパケットの出力タイミングを生成することで実現する。 また，②については，受信機側に設けたバッファのデータ残量の変化に注目し，送信機側の基準クロックの周波数を推定する方式を開発した。 この方式をIEEE802.11aを用いた試作機に実装し性能評価を行ったところ，PCR (Program Clock Reference)の到着時刻変動を500 ns以下とする目標性能を達成することができた。