生物エネルギーモデルを用いた日本系サケ（Oncorhynchus keta）の成長に影響を及ぼす環境因子の解析

摘要

サケ（Oncorhynchus keta）は北太平洋と北極海の一部に分布しアジアと北米の地域集団に大きく分けられる．前者は日本とロシアの集団に分けられ，分布域は重複するものの，それぞれ異なった回遊様式を有している（Neave et al.,1980）．また，日本系サケの個体群はほとんどが肺化放流によって維持されているものと考えられている（Kaeriyama，1999；Hiroi，1998）．過去の研究によると，放流.降海後の日本系サケ幼稚魚は沿岸水域で3ヶ月程度過ごした後，1年日の初夏から晩秋にかけて，オホーツク海で生活する．そして水温の低下に伴い11月頃にオホーツク海を離脱して南下を開始し，北太平洋西部城で最初の越冬を行うらしい．越冬期間中には海流などの影響により少しずつ東側へ移動し，その後夏までにべーリング海へ北上すると考えられている．ベーリング海で索餌回遊をして著しく成長した後，北太平洋東部で越冬した日本系サケは，ベーリング海と北太平洋東部の問で季節による南北移動を繰り返しながら摂餌し成長する．そして最終成熟を迎える初夏になると順次ベーリング海を離脱して，日本沿岸の母川に回帰すると考えられている．また，海洋生活期の長さには約2年～4年の個体差があると考えられている（Azumaya and Ishid, 2004；入江，1990；浦和，2000）．本研究では，さけます類の研究で一般に用いられている年齢加算方法にしたがい，海洋で1回越冬を経験したサケを海洋年齢1歳とし，海洋で越冬するごとに年齢が加算されると定義した．