曰蘭トマト品種の果実成分と収量性

摘要

オランダにおけるトマトの生産性は年々上昇しており、近年は10a当たりの収量が601を 超えている。これは、我が国の一般的な収量 の数倍にも達する。この生産性の違いは、気 象条件や栽培施設の規模、設備等の栽培環 境に起因していると考えられる一方で、品種 特性によるところも大きいと考えられる。ォ ランダでは、収量性の向上を指向した育種 がなされてきたのに対し、'桃太郎'に代表 される日本の生食用大玉トマト品種は、収 量を犠牲にして食味に焦点を置いた育種が なされてきたため収量性が低いと考えられる (Higashideら，2012)。果実収量性に関して は、日蘭品種の比較報告は数多いが、日蘭両 品種の食味に着目した報告は殆ど見当たらな い。そこで、我々は日蘭両品種間の食味に関 連する成分を比較することを目的として、同 一条件で日蘭両国の典型的品種を栽培し、主 要な呈味成分等の分析に果実を供すると共 に、果実収量性データと併せて評価してきた。 トマトの食味には、呈味性を有する可溶性 成分と香気成分、食感等が関与しているが、遊離糖や有機酸、アミノ酸等の主要な呈味成 分の影響が最も大きいと考えられる。呈味性に関わらず全ての可溶性成分の含有量の指標 となるの力Brix値であり、イチゴゃメロン等 の遊離糖含有量が極めて高い野菜の場合には 甘さの指標として有効である。野菜に含まれ る主な遊離糖は果糖、ブドウ糖、ショ糖であ ることが知られている力5'、糖の種類によって甘味の強度や温度依存性等が異なることに加 え、品種や栽培条件等によって各糖の含量も 大きく異なることから、個々の糖組成分析が 望まれる。また、トマトにおいては、クェン 酸を主とする有機酸の含量が酸味を決定づけ る重要な要素であり、糖と酸のバランスがお いしさに重要であるとされている。さらに、ト マトはうま味を呈する成分であるグルタミン 酸を高濃度に含むこと力5'、広く認知されてい る。トマトらしい味は、グルタミン酸に加えて ァスパラギン酸がある程度含まれることで構成されていると考えられる（福家，1994)。呈