疎水性物質生産の場としての二相培養系

摘要

バイオプロセスは，物質生産におけるエネルギー負荷 の低さや，立体位置選択性の高さが大きな特徴となって おり，高度にスマート化された合成化学プロセス（ダリー ンケミストリ一）と共に，持続可能な社会の実現に向け て物質生産の中心的な役割を担うことが期待されてい る.しかしながら，基質（前駆物質）や生産物となる疎 水性物質（特に芳香族炭化水素）の生物毒性のため，バ ィォプロセスにより疎水性物質を生産することは困難とされてきた.たとえば6，6-ナイロンやポリエチレンテレ フタレートの中間体とLて有名なトルエンは，ほとんどの微生物に対して高い毒性を発揮することが知られてお り，またごく低濃度の反応生成物でも微生物を被毒する ことがあると言われている.そのため，有機溶媒耐性微 生物を用いた疎水性物質生産の試みが数多く研究されて いるカ气たとえ有機溶媒耐性微生物を用いるとしても，基質と生産物質の濃度をできる限り低く抑えることが望 まれる.このことは微生物による物質生産では、疎水性 物質の生産性を高め、工業化を実現することが闲難であ ることを意味する.この課題の解決策として注目を集め ている方法の1つに二相培養系がある.