マツ材線虫病における細菌関与説

摘要

マツ材線虫病は，病原体マツノザイセンチュウをマツノマダラカミキリが媒介することによって引き起こされるマツの伝染病である。当然ながらその防除対策は，マツ，マツノザイセンチュウ，マツノマダラカミキリ3者の相互関係にもとづいている。 マツの発病にはマツノザイセンチュウに加えて細菌の関与が不可欠であるとする，いわゆる細菌関与説がこれまでに提唱されている。 この場合，マツノザイセンチュウは細菌の運び屋としての位置付けである。 そのうえで，細菌を「真の病原体」とする見方が導かれた。また一方で，マツノザイセンチュウと細菌が共同して引き起こす病気との認識も示された。 こうした細菌関与説は，これまでの3者関係をより深化してとらえたものと評価できるだろう。しかしながら，現状では細菌関与説はいまだ仮説としての段階にあるといえる。 仮説の実証にはさらに多くの追試を経る必要があり，その成果はマツ材線虫病の本質をより明確にすることで，例えば発病機構の解明などにも資するものとなるだろう。