イネの粗からの蒸散と登熟との関係

摘要

イネの粗からの蒸散速度と登熱との関係をさまざまな品種で明らかにしようとした．登熟期間中の飽差当たりの蒸散速度は供試したどの品種でも登熱初期に高く，以後漸減した．出穂後5と10日目との間の平均蒸散速度の高い品種ではその期間の籾の乾物重の増加率が高いことが認められた．また登熱期間中の飽差当たりの蒸散速度と粗の相対生長率との間には大多数の品種で強い正の相関関係が認められた．登熱期間中の平均飽差が7hPa以下または13hPa以上の場合には大部分の品種で1000籾重が低下した．出穂開花後の穂にワセリンを塗って登熟させると登熱は明らかに妨げられた．このように登熱期間中の粗からの蒸散と籾への乾物の蓄積との間には関係が認められ，登熱に適切な蒸散速度には品種間に違いのあることが推測された．