乾田直播における栽培イネの出芽様式の多様性について

摘要

本実験は栽培イネ（Oryza sativa L.）の出芽に関する多様性を調べる目的で行ったものである．IRRIのコアコレクション（260品種）の中から，栽培イネの多様性を考慮して，原産地（アジア，アフリカ，アメリカの12の国や地域），生態種（インド型と日本型），栽培特性（水稲と陸稲），デンプン特性（モチとウルチ），および粒重（18.7mg～32.2mg）等を異にする20品種を材料として用いた．第1実験では，これらの20品種を用いて，5.5cmの播種深度における出芽様式を調査した．その結果，低位節問の伸長と出芽様式に関して幅広い変異が認められた．第2実験では，第1実験の結果を参考に，特徴的な節間伸長特性を示した14品種を選び，各々品種を2.8cm，5.5cm，8.3cm，11.0cmの4段階の深度に播種した．出芽様式および出芽率の変化を調査した結果，5.5cmまでの深播きでは，中茎と鞘葉からなるMC個体の出芽率がまさっていた．しかし，11.0cmのような極端な深播きでは，MC個体よりも，むしろ，土中で鞘葉より第1葉が抽出し，第1節間が伸長し，第1葉の先端が出芽器官となる出芽様式を示す個体で出芽率がまさっていた．