バイオサイエンス的植物病理学の役割

摘要

生物学は，生命現象や形態を入念に観察して，これらの原因について仮説をたてることはできても，これを証明することは出来なかった．メンデルの偉大な発見（遺伝の三法則）もあくまでも仮説であり，これが正しいことを証明する術はなかった．生物学で，仮説の証明が出来るようになったのは，分子生物学の出現を待たねばならなかった．分子生物学は，1940年代頃，多くの化学者，物理学者が，生物を対象として，彼等の分野でほ当たり前の科学的研究の進め方を導入しようとして始まった．当初ほ，大腸菌やこれに感染する細菌ウイルス等の，最小の生物や準生物を研究材料としたが，これらとて，彼等がこれまで扱ってきた原子，低分子にくらべると，とてつもなく大きな分子（核酸，たんばく質，脂質，多糖質など）の集合体であった．しかし，いざこれら巨大分子の構造を解析してみると，所詮は，アミノ酸とか，ヌクレオチドとか，糖とかの低分子が，それぞれの規則性に従い，繋げられたものに過ぎないことがわかった．すなわち，巨大分子といえども，従来の化学，物理の分野で確立された科学的研究手法を利用できるということを意味する．