近年の農業へのケイ酸利用と研究 4.ケイ酸の病害虫防除効果とその防御機構

摘要

わが国の作物生産においてケイ酸に関心がもたれるよう になったのは，イネのいもち病耐性にケイ酸が関与してい ることの発見（小野寺，1917)がきっかけであった.以降， 特にいもち病を中心に数多くの研究が報告された.さらに， 近年ではこのような効果はイネ科作物以外に，ウリ類やイ チゴなどのうどんこ病に対しても認められ，国際的にも多 くの研究成果が報告されている.かつてはケイ酸の病害虫 防障効果は，病原菌糸の表皮細胞貫入に対する抵抗性や食 害虫のロ器の磨耗の観察などから表皮細胞に沈積したケイ 酸の物理的作用によるものと考えられてI、たが，最近は細 胞レベルでの病害抵抗性機構の研究が進み，ケイ酸による 発病抑制効果についても'遺伝子レベルでの解析が行われつ つある.すでに2000年までの研究成果については，前川 ら（2002c)により「ケイ酸と作物生産」におV、て詳細に 報告されており，一部重複する内容となるが，今回は主に 2000年以降のケィ酸施用による病害虫被害軽減効果とそ のメカニズム研究の近況について紹介する.