トランスポーター研究が土壌、肥料、植物栄養学にもたらすィンパクト7.イオン輸送機構制御による高ミネラル含量作物の作出に 向けたトランスポ一ター研究とバイォリソースの利用

摘要

私たちが日常的に目にする野菜,果物や花の多くは,長 年にわたり原種から改良してきた品種である.今日も品 種の改良は続けられており,日本人の主食である米もその 例外ではなく病害抵抗性や食味などが改良された米の新品種の農林水産省への登録数は,過去5年間で200件を上回る.10年前にモデル植物シロイヌナズナ〔Arabidopsis thaliana)の全ゲノム塩基配列が決定されたころから, DNAシーケンス技術の急速な進展が起こり,植物におい てもゲノム科学は目覚ましく発展してきた.これと並行して,野生種や近縁種など多くの遺伝生物資源が収集され, それらのゲノム情報が整備されてきたことにより野生種や 近縁種を利用した品種改良の研究が増している.こうした 中で,新たな社会ニーズから生じる育種目標に対応できる 高度で迅速な品種改良技術が開発され実用化段階を迎えつ つある.前回までの本講座で取り上げられてきたトランス ポーターは,ミネラル吸収輸送,炭素窒素代謝,恒常性維 持,ストレス応答など重要な生物プロセスに関わっている.