新型インフルエンザウイルスで若年者の発症や重篤例が多い理由はグリコシル化修飾HAによる抗原原罪説で説明可能である

摘要

豚に由来する新型ィンフルェンザウィルスのバンデミックは，WHOの報告によると国による違いはある が, 患者の入院が最大で15%ほど見られ，かつ呼吸補助 が必要となることが多いという特徴があり，さらに基礎 疾患のない健康な子供や若年成人などの若い世代の人々 に高頻度の発症があることも明らかとなっている。症例に年齢分布の偏在があることを説明する考え方と して，「抗原原罪（the Original Antigenic Sin ： OAS)」 という半世紀ほど前の1960年に，T. Francisが報告し た免疫系の奇妙な現象を説明する説が改めて見直されつ つある。宿主がィンフルェンザウィルスの攻撃を受けた 後，同じ型の変異株に遭遇すると，免疫系は第二の攻撃 に対しても，最初に対処したのとほとんど同じ武器であ る免疫系を動員するというもので，以前に感染したウイ ルス株と同様なェピトープ（抗原決定基）を有するウイ ルス変異株が感染すると，どちらの株にも共通に存在す るェピト一プに対応する抗体は迅速に産生される力、二 度目の攻撃ウィルスにしか存在しないヱピト一プに対応 する抗体は産生量が著しく低くなるという現象（これを 抗原原罪現象と呼ぶ）である。