寒冷少雪地域の農地保全技術

摘要

冬期寒冷な気候条件下の北海道では，農業生産性の向上はもとより農業農村環境の整備保全の推進にあたり，さまざまな制約を受けてきた。 とりわけ北海道東部は畑作，酪農など農畜産業の中心地帯として，北海道中央部に位置する水田地帯などとは異なる農地保全技術が求められてきた。 北海道東部は，冬期間の寒冷な気候に加えて降雪量，積雪深ともに比較的少ない地域（以降，寒冷少雪地域）であり，日本有数の土壌凍結地帯となっている。土壌凍結が著しい場合には融凍時期が遅れ，凍結の消失が5月中旬以降に及ぶこともある。 このため，融雪水が農地に滞水して早期排水，乾燥の阻害要因となり，春季の耕起，播種および移植などの営農作業を遅らせている。 また，コムギ（秋播）や牧草などの越冬性作物が凍結害や凍上害（たとえば断根）を受けている。多雪の冬期には土壌凍結はあまり進行しないが，雪腐れ病などが発生することもある。