記録的な単収見通しになったアメリカの穀物生産とその要因

摘要

冬小麦の収穫がおおむね完了した時点で、2016年産の穀物生産が過去最高を更新するとの見通しが米国農務省の8月度需給報告で示された。アメリカでは大平原諸州を中心に比較的降水量の乏しい地域が主産地になる小麦に、前年実績より2割増しの記録的な単収情報が伝わる一方、米国農務省の週間作況、作柄進涉報告が例年になく高い評価を保持したことで、市場参加者は後に続くトウモロコシゃ大豆でも、少なくとも傾向値単収は達成できると見込んでいた。ところが、そうした事前予想を超える楽観的な米国産穀物の単収見通しが、小麦のみならずトウモ口コシゃ大豆でも予測されたことから、世界の穀物需給はさまざまな不安材料を打ち消して、石油に続いて供給過多の状態が想定されるようになった。北半球では冬小麦の作柄はおおむね確定したが、春小麦の収穫はこれからのところが多く、トウモロコシは受粉期を終えて榖粒形成の真最中であり、大豆は開花-着莢の段階で今から結実期に向かう。さらに、大豆は世界の半分以上が南米諸国で生産されるようになり、播種作業は^月以降である。市場には、豊作の年は後追いで作柄の上向き改訂が続くというジンクスがあるが、往々にしてコンバインが畑に入つて初めて思いがけない結果に直面することがあり、最終の作柄は成熟期の天気次第という要因を考慮すると、今回の予測値を受け入れるのはあまりにも時期尚早といえる。(資料①を参照願う)。