道半ばにある中闻農村教育投資制度の改革 ―都市との教育格差の現状、背景，対策

摘要

現代中国農村の問題を考えるにあたって、都市との格差問題は避けて通れない。それは教育についても同様である。教育の格差の歴史的経緯と実態を解説し、格差縮小のために中国政府がこれまでにとつてきた対策とその効果について分折する。経済発展が続いている中国で、いま最大の社会問題の一つは格差の拡大である。その実態はジニ係数などで確認するまでもなく、中国は都市と農村の間に大きな制度的な「壁」がある。その影響で、農村1人当たり可処分所得は都市の3分の1ほどしかなく、農村住民の享受できる年金、医療、学校教育などの公共サ—ビスまでもが都市と大きな差が付けられている。都巿と農村あるいは農工間の格差は現代中国の社会格差の縮図といえよう。中国での農工格差、とりわけ学校教育面の格差は今になって問題となったわけではない。二十数年前からよく議論されてきた問題である。そのため、中国政府もさまざまの対策を講じてきたが、その内容と実際の効果はどうだろうか。本稿に与えられた課題は現代中国農村の教育問題を紹介することだが、実は農村の教育問題も都市との比較を抜きにして語られない側面がある。よって、以下"中国における都市.農村間の教育格差の問題を中心に紹介していく。具体的には、まず格差の歴史的な経緯と実態を説明し、そのうえ、格差縮小のため中国政府が取ってきた対策を紹介し、最後にその効果と残された課題について検討する。