植物の根に関する諸問題〔195〕 一水稲の多収栽培と根一

摘要

2008年末,トウモロコシのバイォ燃料への転用な どを契機に穀物価格が高騰し，世界各地で暴動など が起こり混乱を生じた力5,本年もロシアでの猛暑に よる小麦の不作にともなつて国際価格が高騰する など，近年世界的な食料生産の不安定化や需給の逼 迫が懸念されている.また，2009年に約68億人と なった世界人口は2050年には91億人に達すること が予想されているが，食料生産の伸びは耕作地の拡 大および単収の増加ともに大きな伸びは期待でき ない状況になっている.現在の世界の飢餓人口は9 億人を超えている中，我が国の食料自給率は力口 リ一ベースで約40%と，非常に低い水準で推移しているために,食料の国際価格変動の影響を受けやす く，また，長期的な食料安全保障を考えるど非常に 不安定な状況にあるといえる.国内産米については主食用米は消費の減退やこれにともなう在庫増な どにより価格が低迷するなか，近年米粉用や飼料用の米生産が政策的なバックアップなどもあり増加 してきている.このような非主食用米の生産は，「主 食用米生産の調整」や国産飼料供給，小麦需要の一 部代替を通して「食料自給率の向上」への貢献が期 待されている.非主食用米品種として，低コスト安 定生産が可能な多様な多収品種が育成されてきて いるが，このような品種を用いた多収栽培の確立が 急がれるとともに，上述のような状況に対応した世 界的な食料生産の安定化への貢献も含め，水稲の多 収研究は中長期的に重要な研究課題となっている.