中国の土地請負経営制度下の営農システムの制度的枠組みと四川省の遠隔地農村から見たその運用実態

摘要

近年，農村コミュニティの持続性をいかに維持するのかという課題が欧米や日本などの先進国のみならず農村改革を目指している中国でも浮上してきている．諸外国の研究においては，持続的農村コミュニティとは，「他のコミュニティにおける再生産を減ずることなしに，経済的，社会的，文化的及び生態的意味で自らを再生産し，発展させる能力をもつコミュニティ」と定義されている．ところで，人々は与えられたインセンティブや情報に従って行動する．それゆえ持続的農村コミュニティを維持するためには，人間に適切な情報やインセンティブを与える制度的枠組みの創出が鍵である，農村コミュニティは，農村社会だけではなく，社会全体の制度的枠組みとも結び付いている．しかし農村の世界では．労働や資本とならんで，あるいはそれ以上に土地は農業生産の重要な要素であり，都市経済が農業経済なしに存在できないという視点から言えば，農村の土地制度は，農村コミュニティはもちろんのこと社会全体にとっても，その制度的枠組みの基礎である．こうした認識に立ち，拙稿では農村土地制度論から課題に接近する．