マイクロファイナンスとインフ才ーマル信用制度の相互作用について一カンボジア農村の事例よリー

摘要

途上国農村における貧困削減は開発経済学の最終 的な目標である.貧困削減を目的とした，公的機関やNGOによる様々な市場を基礎とした多くのプロ グラムが実施されてきたが，これらの市場を基礎と したプログラムの導入は，人々による伝統的な，貧 困削減·貧困緩和を目的とする協働行為に負の影響 をおよぼすかもしれず(Bowles, 2008),貧困削減· 緩和のプログラムの総合的効果を評価する際の問題 点として注目されている.この点に関連して，貧困削減プログラム（マイク 口·インシュランス，貯蓄組合，マイクロ'クレジッ ト）がィンフォーマルな保険制度におよぽす影響に ついては，いくつかの実証研究が行われているが， インフォ一マルな金融については，フォーマルな金 融機関が増加する中で，金貸し業のようなィンフォー マル金融が共存していることが確認されているものの（Morduch, et al.， 2010)，インフォーマルな疑 似信用制度（親戚·友人間の無利子融資及び贈与） への影響については，Disney, et al.(2010)， Flory (2011) の研究があるのみである.また，Disney, Floryら の研究は，フォーマルな信用制度の導入がインフォ一 マルな疑似信用制度に負の影響を与えることを実証 したものの，その逆にインフォーマルな疑似信用制 度の存在や社会的ネットワークが,フォーマルな信 用制度に，いかなる影響を及ほしているか，フォー マル，インフォーマル制度間の相互作用については 検討されていない.