カドミウム高吸収特性を示すイネ品種を利用した汚染水田土壌の修復技術

摘要

カドミウムは非汚染土壌中にも微量ながら存在する重金属である。ところが、かつて鉱山開発などにより地中からカドミウムが掘り出された地域においては、鉱山周辺や下流域の水田などに高濃度に汚染された土壌が存在する。高濃度汚染水田で栽培された玄米の慢性的な摂取がイタイイタイ病の主要な原因とされ、1970年厚生省（当時）は食品衛生法を改正し玄米中のカドミウム許容濃度を1ppm （mg kg~(-1)）以下と設定した。 また、食糧庁（当時）は1ppmを超過する玄米を政府買い入れの対象としない方針を決めた。 翌年には農用地土壌汚染防止法により1ppm以上の玄米を産出する水田を対策指定地域とし、客土などの土木工法による吸収抑制対策がとられてきた。 また、1ppm以下であっても高めの玄米は非食用に処理され、それらを産出する水田に対しては湛水処理や資材投入とい、つた営農技術による吸収抑制対策がとられている。 しかし、近年FAO／WHO合同食品規格委員会（CODEX委員会）により食品中のカドミウム濃度に関するさらに厳しい国際基準値が検討されていることや、消費者の間で食品の安全性についての関心が高まっていることなどから、農作物中のカドミウム濃度をより一層低減させる必要が生じている。 新基準値を超えるおそれがある水田に対する改善対策として、植物を用いた汚染土壌修復技術（ファイトレメディエーション）がユストなどの面から有望であると考えられる。 しかし、これまでに水田を修復対象としたファイトレメディエーション研究はほとんどない。 そこで、汚染水田土壌での栽培に適する修復植物を選定した。