農家のための鳥獣害総合対策イノシシ対策(2)

摘要

イノシシの被害対策の1つに防護柵の設置がある。防護柵は非常に有効な対策であるが、イノシシの行動特性を考慮して正しく設置しなければ、その効果はなくなつてしま、つ。実際に柵を設置している農地を見て回ると、正しく設置されている柵もあるが、残念なことに設置ミスをしたものも多く見られる。そこで、今回は効果的な防護柵設置の考え方をイノシシの行動特性を基に紹介する。イノシシは非常に高い運動能力を持っている。特に跳躍能力は素晴らしく、成獣個体は1、 2 mの高さを助走なしで飛び越えることができる。1歳未満の子イノシシでさえを飛び越える。この情報だけを聞くと、イノシシの侵入を防ぐためには柵の高さをそれ以上にしなければダメであると考えてしまう。しかし、このような高さの柵が必要な場合はほとんどない。なぜなら、イノシシは優れた跳躍能力を持ちながら、柵を飛び越えることを優先して行うことはない。野生動物であるイノシシにとって脚を負傷することは、動けなくなりエサを探すことができなくなる等の生死に関わる重要な問題となる。そのため、跳躍という行動は脚を痛める可能性が高く、イノシシにとつて飛ぶということは、非常に慎重にならざるを得ない行動であり、柵に対する行動としても優先度が低いと考えられる。