むらの変貌と農村社会再編の展望一連帯経済の構築と自給の再評価一

摘要

これまでわが国の農村社会の基本単位は，むら=集落 とされてきた。鈴木は，わが国の農村は，組や小字の第1社会地区，集落の第2社会地区，行政村の第3社会 地区という地域的に3重の構造になっており，このうち 第2社会地区=むらが特に結束の固い集団累積体である ことを指摘して特別な位置づけを行っている。すなわち， むら=集落を一定の空間的領域における社会的統一体で あるものとして措定している。わが国の農村社会は，共同で行う農作業や農業用水の 利用を中心に，家と家とが地縁的に結び付いた集落を基 礎として形成、維持されてきており，農地や農業水利施 設の維持管理等の農業生産面にとどまらず，集会所の維 持管理，伝統文化の継承，地域住民の相互扶助等，地域 の様々な役割をむら=集落が担ってきた。集落の成立過 程や性格規定などをめぐっては，これまで，様々な議論 が行われてきたが，集落が近世以降の日本の農村社会の 基本単位であることは，共通の認識となっている。