中山間地域における耕作放棄水田の植生変化が復田作業に及ぼす影響

摘要

近年，全国各地で急速に進む水田の耕作放棄は，わが国の食糧生産ポテンシャルをさらに低下させるとともに，従来の二次的自然環境を大きく変容させ，水田が本来備えている各種の環境保全機能の低下を引き起こすことが懸念されている。とりわけ中山間棚田地域では，斜面崩壊などの自然災害の増加や，良好な棚田景観の消失が大きな問題となっている。 そのため，植生をはじめとする自然環境の変化に関する詳細な調査に基づいた，放棄水田の適正な保全，管理方策の確立が，長期的な食料需給をふまえた農地資源の保全および，二次的自然環境の保全という両方の観点から，緊急の課題となっている（有田ほか2000）。