聴性脳幹誘発電位によるBSE層患牛の臨床検査

摘要

牛海綿状脳症（BSE）は，異常プリオン蛋白質（PrPSc）の伝達によって生じる牛の致死性の神経変性疾患で，我が国でのBSE検査陽性牛は2008年12月までに35頭が確認されている。現在，BSEの確定検査は死後の脳材料を用いた生化学的あるいは免疫組織化学的手法によるPrPScの検出によって実施されている。BSEにおけるPrP鮎の蓄積は脳幹や脊髄などの部位に局在しており，これらの部位を牛が生きたまま採取して診断に用いることはきわめて困難なことから，現在のところ有効なBSEの生前診断技術は確立されていない。また，BSE雁患牛では体重の減少や泌乳量の低下などの生産性低下，歩行障害や起立不能などの運動機能障害が観察されるほかに，異常行動や刺激に対する過剰反応等の臨床症状が認められることが報告1）されているが，これらの臨床所見が必ずしもBSE雁患牛に特異的に認められる症状というわけではないため，臨床症状の観察のみでBSEを臨床診断することはきわめて困難である。