牛の蹄骨骨折、蹄関節炎の超音波像

摘要

蹄骨は蹄鞘内にある肢端の骨である。蹄骨骨折は蹄底の重度の外傷に起因し，骨折線は蹄関節中央から蹄骨底に達するものが一般的である。典型的には前肢内蹄によく起こり，発情来駕後に蹄を硬い床に落とすことも骨折の要因のひとつと考えられている。そのほかには高齢牛，フッ素中毒，蹄骨への感染の穿孔（感染性，外傷性蹄皮炎から蹄骨に感染が波及する）などが原因となる。　症例は7歳のホルスタイン種牛で顕著な政行のため来院した。このとき，左後肢は着地負重できないほどの痺痛があり，すぐに胸骨臥位になってしまう状態であった（写真鵬1a）。左後肢外蹄にはブロックが装着してあった（写真－1b）。左後肢外蹄には蹄冠周囲の硬い腫脹と蹄球の腫脹がみられた。蹄底のブロックを外してみると，ブロック下に蹄底潰瘍の肉芽病変が認められた（写真－2a）。蹄のⅩ線検査および超音波検査を行った。蹄骨骨折と蹄関節炎の合併と診断し，これらの病変は痺痛と鍍行が持続するばかりで，治癒の見込みがないと判断して断址術を実施した。