健康牛，臨床的乳房炎牛，乳房外の炎症性疾患牛の血清と牛乳中の急性期蛋白濃度

摘要

乳房炎は，酪農業において非常に被害の大きい疾患である。 乳房炎の正確で迅速な診断によつて，治療効果を最適化し回復時間を最小にするので，損失が減少し動物福利にも役立つと思われる。乳房炎の診断は，身体検査，体細胞数の検査，牛乳からの病原分離などに基づくが，自動化された搾乳器の導入とともに乳房の健康状態の迅速な判定指標が求められている。急性期蛋白は最近，乳腺における炎症の指標として示唆された。急性期反応は，広範囲の刺激に対する一群の非特異的な宿主反応といわれている。それは肝臓で合成された多数の血薬蛋白，いわゆる急性期蛋白の濃度変化によって特徴づけられる。血清アミロイドAとハブトグロビンは，牛における2つの主要な急性期蛋白である。 それらの蛋白は，正常動物は低濃度で，炎症の急性期の段階で急速に増加し疾患の回復期に急速に減少するので，疾患マーカとして潜在的に有用である。 牛におけるこれら2つの急性期蛋白濃度は，自然発生的に増加したとか，乳房炎発生のときに増加したと報告されている。Eckersallら（2001）が，臨床的乳房炎牛の牛乳で，それらマーカの有意な濃度増加を最初に認めた。 その報告では，血清アミロイドAは細菌学検査より一層感受性があり，体細胞数測定や牛乳の電気伝導率に比べて牛の生理的な影響を受けにくく，乳腺で局所的に作り出されるので，乳房炎の迅速で特異的マーカとなる可能性が示唆された。 しかしながら，乳腺以外で起こっている炎症性病巣が，牛乳中の濃度に影響を与えろかどうかはまだ判つていない。 この論文の目的は，健康牛，臨床的乳房炎牛，乳房外の炎症性疾患牛の血清と牛乳中の急性期蛋白濃度の問の関係を調べることである。