きのこの育種と遺伝資源前一

摘要

財団法人日本きのこセンター菌蕈研究所は菌類.きのこを通して森林、山村の健全な発展に寄与することを基本理念として活動しています。この活動の一環として、筆者は里山および森林資源を活用した循環型きのこ栽培の代表である原木シィタケ栽培に使用する品種の開発に携わつてきました。本稿では、我が国における主要きのこの近年の生産動向を簡単に説明した後、原木栽培用シイタケの育種および遺伝資源について述私たちの祖先は1300年以上前の古墳時代から食用あるいは薬用として野生のきのこを利用してきたとされ、シィタケやエノキタケの栽培は300年程度前から始まりました。きのこの純粋培養種菌が開発されるまでは、野生きのこが発生している腐朽木や天然胞子を付着させた原木をきのこが発生しやすい環境で管理する天然胞子依存型の栽培でした。このため、収穫量は少なく、作柄は極めて不安定でした。