家畜領域におけるアミノ酸の利用: アミノ酸の飼料への添加とその作用ならびに機序

摘要

RoseとMeyerが最後の必須アミノ酸であるト レオニンを発見して以来，アミノ酸は栄養学の中核 の一つとして認識されてきた。アミノ酸は，3大栄 養素の一つである蛋白質の最小構成単位としての認識が一般的である。蛋白質は生体の構造を司り，ホルモンや酵素など 生理を支える重要な物質であることから，生産にお いて最も重要な栄養素として知られている。蛋白質 は構成するアミノ酸によってその種類，それにとも なう生理作用が決定するため，近年では蛋白質の栄 養価はアミノ酸によって左右されることが明らかに されてきた。一方，植物では構成蛋白質アミノ酸が動物と大 きく異なる。そのため，畜産において多く用いられ る植物性飼料原料ではいくつかのアミノ酸が動物の 要求量にとつて極端に少なく ，動物性の飼料原料に 比べて窒素の利用効率が低い。それら相対的に他の アミノ酸に対して動物の要求量を満たしていないァ ミノ酸を制限アミノ酸と呼んでいる。飼料へのアミ ノ酸の応用は，まずこの制限アミノ酸を供給するこ とにより，少ない動物性飼料原料でも十分な生産能 が得られるようにすることから始まった。